高校時代の思い出、北杜夫

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2階の書庫にあった北杜夫の著作 きょう(27日)付の新聞で「どくとるマンボウ」シリーズなどで著名な作家・北杜夫氏が亡くなったと知りました。享年84歳。朝日・天声人語、日経・春秋、読売・編集手帳という1面コラムが軒並み北氏のことを取り上げていましたが、私たち60歳前後の世代にとって「北杜夫」という存在の大きさを、あらためて教えてくれました。

 全編ユーモアがほとばしる「どくとるマンボウ」シリーズの「航海記」や「青春記」、「さびしい王様」、また純文学として評価の高い精神科病院を舞台に祖父、父らをモデルとして一族の歴史をたどった長編「楡家の人びと」、「幽霊」、「夜と霧の隅で」、「白きたおやかな峰」など、北氏の著作の数々は私の高校時代から大学へと続く青春期と重なります。

 とりわけ、表紙に安曇野平野から仰ぎ見た常念岳の美しい写真を配した「青春記」は、彼が旧制高校時代を過ごした信州・松本を舞台にしたもので、多感な高校生活を送っていた私を旧制高校の世界へと引きずり込みました。それまで行ったこともない“信州”への憧れを触発され、バンカラの世界にはまり込み「高下駄」を買い込んで商店街を闊歩したりという今思えば赤面する思い出も…。そして、高校図書部に在籍中、「図書館報」に彼の文体をまねした駄文を書きまくったことも、当時の顧問の先生のおおらかさをいまさらながら感じさせてくれるのです。

 大学時代は山岳部に入って信州の山々・北アルプスに分け入りましたし、ジャーナリスト志望だったため長野のローカル紙「信濃毎日」の入社試験も受けました(2次試験で落ちましたが)。そんなこんなの影響を与えてくれたのが北杜夫でした。

 私にとって、一つの青春時代の思い出を見届けた、そんな北氏の死去でした。

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