「公田耕一」というホームレス歌人

読むものも、書くものも、全て質問や討論に関するもの、

という日々が続くと、

全く関係ないものを、無性に読みたくなります。

今、起きがけ15分、寝る前15分、とかチョビチョビ読んでいるのが、この本。

2009年の冬、数か月だけ朝日歌壇に十数点の入選句を残して、

ぷっつりと消えた「ホームレス・公田耕一」と名乗る歌人。

横浜寿町や関内駅周辺を歩いて、ホームレスの人たちの間を歩き、

「公田耕一」を探す、その短歌に詠まれた暮らしや人生を追う、ドキュメンタリーです。

私の詩歌の原点は、母が戦後本もない頃古本屋で買った石川啄木の、

「一握の砂・悲しき玩具」で、繰り返し読み、線を引きながら読んだものですが、

20代には、朝日歌壇入選から作家になられた松下竜一さんの「豆腐屋の四季」にも大きな影響を受けました。

松下さんの歌はしろうとっぽい、ごっごっした、生活の悲しみやいとおしさの詰まった歌でした。

このホームレス歌人の歌の中に出てくる横浜は、

最近妹のところで共に暮らす母を訪ねて度々足を運んでいる町です。

そして2009年ごろは私の身内にもリストラや倒産が続きました。

そんなあれこれを想いながら、大事に読んでいます。

 

パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる

胸を病み医療保護受けドヤ街の柩のような一室に居る     公田耕一

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