学校図書館の司書をしていたころ、
「暮しの手帳」という年4回の季刊誌を楽しみにしていました。
美しくて温かみのある表紙、
そしてタイトルが親しみのある手書き文字の、
カットも鉛筆でちょこっと描いたよ、みたいな雑誌。
そして提案されている暮らし方の豊かさ。
その表紙が、タイトル文字が、カットが、
花森安治という大変風変わりな人の手になるものだと知ったのは随分後になってから。
(伸ばした髪をカールして、手作りのシャツ着て、割烹着つけたりする男の人、その頃いなかった。)
若い頃は料理も服装も随分影響を受けました。
その花森安治展がいま島根県立美術館で開催中。
昨日環境会議の帰りは寄る余裕がなく(慌しいのはいやで)、
今日の午後改めて行ってきました。
花森安治は戦争中に大政翼賛会の仕事をしており、
「欲しがりません勝つまでは」などの標語をつくったと言われています。
標語づくりには関わっていたのでしょうが、「欲しがり・・・」は実は小学生のつくったものとか、
いろんな話しが伝わっており、真実はどうなのか不明です。
本人はこのことに関しては一切語らなかったといいます。
戦争を進める仕事をしたことに何の言い訳も出来ないと考えたのでしょうか。
彼は「一銭五厘の旗」という本を書いて、一銭五厘の葉書で戦争に駆り出された臣民のこと、
再び戦争に駆り出されてはならないという思いを込めています。
戦後国民が自らの暮らしの主人公となり、美しい暮らし方をしたいという願いがこの雑誌にはあるように思います。
見覚えのある表紙の原画の数々。
そして編集室の様子を写したビデオや、
商品テストの写真(「○○を買いたいけど、「暮しの手帳」が商品テストしてからにするわ」などという会話がその当時はあった)
火事の実験ビデオなど、楽しみました。
花森安治は関東の人ですが、旧制松高(島根大学の前身)の出身です。